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寄生の現場から語り合う
第1回『都市寄生デザイン会議』アーカイブを公開!(Page1/3)

商店街の街灯に、水辺の手すりに、車を止めるためのボラードに。​既存のオブジェクトに寄生することで、ストリートや都市の、新たな価値を引き出す。そうした行為を『都市に寄生する都市デザイン』と呼びます。それぞれの実践者たちが、2021年10月24日、第2回アーツアンドスナック運動のイベントの一企画として、寄生の現場から語り合う様子を配信しました。その内容を詳細に書き起こしたものをこの度、公開。それぞれの試行錯誤、今後の展望をお楽しみください。

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■ゲスト1

ボラードテーブル(富山・大手モール)

・沼俊之(dot studio)  ・籔谷祐介(富山大学)  ・阿久井康平(大阪府立大学)

■ゲスト2

mizube bar カウンターシステム(横浜・大岡川)

・菅原遼(日本大学/水辺荘)

■ゲスト3

Bollasite -ボラサイト-(渋谷・宮益坂)

・佐々木宏幸(明治大学)

■ホスト

ガイトウスタンド(上野湯島・仲町通り)

・中島直人(東京大学)  ・永野真義(東京大学)

中島:

では第一回『都市寄生デザイン会議』を始めましょう。司会の東京大学・中島直人です。今日は4つのまちそれぞれで「寄生のデザイン」を進めている方々をお呼びしましたが、富山の籔谷先生、阿久井先生、沼先生は、現地のボラードテーブルからご参加。横浜の菅原先生、渋谷の佐々木先生、上野の永野先生のお三方は上野のガイトウスタンドに点々と分かれて立って、zoomに繋いでいます。リアルとオンラインが入り混じった新しいフォーラムの実験でもあります。ではまずはじめに、それぞれの取り組みをご紹介頂こうと思います。

ボラードテーブル(富山)

阿久井:

設置エリアは、富山中心市街地の歴史ある大手モールという街路です。今日、ちょうどトランジットモールイベントが開催されている日で、ボラードテーブルを設置していて、まさに今利用しているところです。

 

中島:

カメラの背景からも、現地の賑わいが感じられますね。

沼:

デザインは、歩車道が一体的に活用されることを目標に考えました。ボラードは普段は歩車道境界として機能しているものですが、そこにワンタッチで設置ができる何かを付け加えることで、人が集まる場所にできないだろうか?というのがアイデアのスタートです。

ちょうど2.5mほどの間隔で立っており、コロナ禍の中で、ソーシャルディスタンスを可視化するものになっています。

 

籔谷:

アンケートで効果検証も行いました。ボラードテーブルがつくりだす場では、利用者の方に「大手モールらしさ」「開放感」を感じてもらえていることがわかってきています。目の前をLRTが走り、富山城も見えるなど、この場所の特性を顕在化させる「寄生ストリートファニチャー」だと考えています。

 

中島:

ありがとうございます。「ワンタッチ」「ソーシャルディスタンス」「場の特性」などのキーワードが挙がりました。

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富山・大手モールのボラードテーブル

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当日は、大手モール現地のボラードテーブルからオンライン参加

Mizube bar カウンターシステム(横浜)

中島:

続いて『Mizube bar カウンターシステム』(横浜)について、菅原先生、ご紹介いただけますか?

菅原:

「身近な水辺を気軽な乾杯の場に」がコンセプトです。「水辺×仮設×寄生」で、河川沿いに設けられた安全柵を活用し、簡易な取付・取外しを可能としたバーカウンターです。川と人を分断するばかりの安全柵を活用し、新たな水辺の公共空間を作り出していこうという取り組みです。昨年から、横浜市大岡川で地域実装に向けた活動を始めました。以降、水辺ルールの徹底、ゴミ飛散対策、傷付け防止対策などを施し、少しづつ形を変えながら月に1回、水辺に取り付けるイベントを行っています。最終的には周辺の飲食店に貸し出しをして、地域で持続的に活用することを目指しています。川辺の飲食店舗の立地価値を最大化するとともに、ワーケーションでなど様々な利用シーンを想定しています。横浜からスタートしたのですが、去年から東京都内、江東区・汐浜運河、隅田川や墨田区北十間川などでも設置しています。

中島:

圧倒的な横展開ですね。「分断」「河川の空間性」などのキーワードがありそうです。 

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横浜・大岡川の mizube bar カウンターシステム

『Bollasite -ボラサイト-』(渋谷)

中島:

続いて、渋谷で『Bollasite -ボラサイト-』を実践されている佐々木先生、ご紹介をお願いします。

 

佐々木:

「ボラサイト(Bollasite)」というのは「ボラード(bollard)に寄り添い(parasitize)人々の居場所(site)を作る」ことから発想しました。渋谷駅周辺地区の公共空間ビジョン策定の中で生まれたもので、宮益坂にある車止めを活用し、自分たちで「制作・運搬・設置」ができるように考案しました。スタイロフォームとボイド管を基本とした作りです。 2020年11月には商店会主催で「ボラサイトテラス」を実施し、ちょっとした仕事や宴会などで、多くの方に使っていただけました。

ただ短期的な変化もそうですが、長期的に宮益坂の公共空間を考える中で、道路の可能性を示唆することが目的です。半恒久的な設置を目指し、集成材等を用いたボラサイト2.0を製作しました。区と交渉し、警察との協議も行ったのですが、「車停めは歩行者を車から守るもので、テーブルを設置するためのものではない」という指摘で、現在は日常設置が難しい状況です。本日はこの取り組みの反省点の示唆を得たいと思っています。

 

中島:

最後の部分は、まさに寄生デザインの課題ですね。「長期的な目標」をもちながら、ということがプロジェクトのポイントであると感じました。

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渋谷・宮益坂の bollasite - ボラサイト -

『ガイトウスタンド』(上野)

中島:

最後に、私も一緒に進めているプロジェクトですが、上野・湯島の『ガイトウスタンド』の紹介をお願いします。

永野:

「ガイトウスタンド」は、商店街の街路灯に着脱式テーブルをつけてスタンドテーブルにしたものです。通り全体にスタンドを点在させて、テイクアウト商品などで立ち飲みを楽しむ企画を2020年秋に行いました。設置エリアは上野と湯島をつなぐ仲町通りという場所です。歓楽街ですが、合間に老舗も立ち並ぶような文化のあるまちです。通りは300m程度ですが、区界もあって街路灯の種類が三種類に分かれています。地元商店会の方々が各々維持している街路灯のある種のバージョンアップです。現在は車が通行止めとなる17時以降のみ設置が可能です。全て市販の物で構成しており、一式1万3千円ほど。一人1〜2分で着脱できる仕様にしています。

中島:

全体を通して、ワンタッチ、自分達でできる、仮設性に共通点があり、場所の特性、空間性はそれぞれがその場の特徴を反映させていますね。

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上野・仲町通りのガイトウスタンド