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寄生の現場から語り合う
第1回『都市寄生デザイン会議』アーカイブを公開!(Page 3/3)

寄生から規制のリ・デザインへ

菅原:

都市河川に整備された多くのプロムナードは、全くひとのための空間になっていません。自分ごととして気づいてもらうきっかけとして、些細な寄生のデザインは非常に有効だと感じています。水辺バーが横浜から他の場所に展開できている理由の1つにそれがあると考えています。うちの川もこれをつければ変わるかも、と良い意味で気軽に思ってもらえます。

 

中島:

空間の新たな活用を促す仕組みとして、モノとして「簡単に見える」ことも大事そうですね。

 

佐々木:

私もほんのちょっとの公共空間への仕掛けが人々の振舞いに大きな影響を与えられるということを可視化したいと思っています。宮益坂は既存の歩行者が十分多く、新たな賑わいというより、ビジネスマンがちょっとしたメールを打つときに使ったり、ウーバーの配達員が休んだりという、ちょっとした振る舞いの変化を起こしたいと思っていました。 私は寄生(Parasitism)のデザインは規制(Regulation)のデザインに発展していくべきであると考えています。本日も苦労しているという意見がでましたが、何かに寄生して何かをつくることのできない公共空間における規制の在り方に問題があると考えており、規制のリ・デザインへの発展性を意識しています。

 

中島:

今現在許されているものを拡張していく方が全く新しいものの許可をとるよりも簡単で、そこがポイントなのかなと考えています。

 

永野:

寄生は構造が簡略化できることもポイントです。結果部材が減り、収納スペースがコンパクトで済みます。ガイトウスタンドは地元の方が所有するビルの階段下のスペースを少し借りて収納しています。学生と話していておもしろかったのが「道路附属物附属物」というワードです。公共的な「道路附属物」とこうした民主的な「道路附属物附属物」をどう繋げるかは、地元の方が手軽に公共空間に参加する機会を提供することにつながっていくと思います。

 

中島:

全部自立したものでつくるとまちがごちゃごちゃすると感じます。共有できる部分を共有することや現在自立したものに附属するからこそ、簡単に誰でもつくれて、見た目も美しいということが達成できると思います。 さて…そろそろ1時間経ちましたが、ガイトウスタンドで立っている私は足が痛くなってきました。確かにこれは椅子が欲しかったかもしれません。第2回はぜひ別の寄生の現場でやれればと思っています。これからも経験を積みながら共有していきましょう。

 

一同:

ありがとうございました!

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AFTER TALK 

「都市寄生デザイン会議」への参加は、同様の取り組みを進める研究者や実践者との意見交換を通して、寄生のデザインによる都市空間改善の可能性を実感する貴重な機会となった。そこで紹介された取り組みは、いずれも普段何気なく目にしている街灯、手摺、車止めなどに着目し、それらを構造体として活用しながらカウンターやテーブルなどを付加することで、人々の居場所をつくり出す試みである。

寄生のデザインは、街中に潜む多様な空間改善の可能性を可視化する有効な手法であり、短期間、低コストで実現できること、容易に着脱できることなどが魅力である。同時に、イベントなどでの一時的居場所づくりだけに焦点をあてるのではなく、恒久的な都市空間改善のための端緒や問題提起として捉えることが重要である。

管理者である行政との意見交換や折衝を積極的に行い、都市空間の価値やあるべき姿に関する共通認識の醸成に粘り強く取り組み、「規制のデザイン」と並行して進めてゆくことが不可欠であると考える。

佐々木宏幸(明治大学専任教授/FTS Urban Design代表)

「都市寄生デザイン会議」では、全国各地で同時多発的に実施されている公共空間での実験的活動が共有された。こうした動向は、従来、地域内に潜在的に存在した身近な公共空間活用のニーズに対して、新型コロナウイルス感染拡大に伴う都市生活者の屋外活動(人や自然との触れ合い)の欲求の高まりが後押しとなり具体化に至っていることが読み取れる。また、「寄生」というごくわずかな環境変化をきっかけとして公共空間の新たな賑わいづくりに繋げている点も特徴である。特に各実践地で注目すべきなのは、宿主となる既存の公共空間の附属物(街灯、車止め、手摺り)の形状や役割への「観察力」と寄生を実現させた「地域調整力」といえる。こうした一連の寄生デザインは、これまで認識されてきた公共空間の附属物の「本来的役割」に加えて、人々の屋外活動の多様化を支える「偶発的役割」の付与に繋がり、都市活動の多様化を支える柔軟な受け皿として公共物が見直される契機となるだろう。

菅原遼(日本大学助教/一般社団法人水辺荘理事)

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